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映画「羊の木」の試写を見てきました。

試写会後は吉田大八監督へ直接質問ができるティーチインもあり、とても楽しい試写でした。

設定の妙

とある港町で市役所で努めている主人公が、極秘に受け入れた元受刑者6人の案内役となり、事件に巻き込まれていく。
現代社会の問題にも通ずる架空の過疎化対策で、平穏な街に異常を持ち込む絶妙な設定がとてもおもしろい。
「いいとろこですよ。人もいいし、魚も旨いですから。」といういかにも移住者をうけいれる役所の職員がいいそうなセリフから感じるありふれた日常感と、その言葉を聞く殺人犯の非日常感からはじまる違和感で物語に引き込まれてしまいます。

すばらしい配役

吉田大八監督の作品ってどれも配役がすばらしいですよね。
松田龍平(宮腰)の清純な不気味さ、市川実日子(栗本)の弱々しくも一本筋の通ったやさしさ、優香(理江子)の一途なエロさ、水澤紳吾(福元)の真面目でダメな酒乱ぶり、田中泯(大野)の無骨で生真面目な不器用さ。
北見敏之(月末の父)のスケベな要介護者っぷりもよかったし、なにより主人公の錦戸亮(月末)の絶妙な普通さがすばらしい。
ティーチインで監督が“映画は役者ありきで役者を見せるのが映画”といったようなことをおっしゃっていました。
役者を見るために映画を見る、と監督ご自身が言われくらい。
見てほしいな、素晴らしい配役と演技を。

主人公月末という人物

6人の元受刑者の案内人であり、物語の傍観者であり、平凡で面白みのない主人公なんだけど、普通ではない精神的タフさに小さな異常を感じてしまう不思議な人物。
いたって普通の主人公に、吉田大八監督の作品ではめずらしいなと感じたのですが、やっぱりどこか異常な感じもします。
ただ、月末という人物を深く見すぎているだけかもしれないですが、そう考えてしまう絶妙な設定と錦戸くんの演技に脱帽です。

羊の木というタイトル

ひっかかりますよね「羊の木」。予告で映る羊の木のイラストも印象的だし、罪深いなにかを感じさせるもやもやしたなにかが、映画を見てはっきりするかと思っていたのですが、結局のところよくわからなかった。
だから、あまり「羊の木」というタイトルにとらわれすぎないで映画を見たほうがいいかもです。

自分だったらどうだろう?

この映画はとにかく見る人に考えさせる映画だと思います。
隣人が殺人犯だったらどうだろうか、好きな人が殺人犯を好きになってしまったらどうするか。親友が殺人犯だった時に、どこまで信じられるか。
映画を見ながら自分の周りに罪を背負って生きる人がいた時に、自分自身や他をどこまで信用し受け入れれていけるかを考えてしまいます。
また、逆に自分自身が罪を犯した側で、周りから差別的な目を向けられていたらどうだろうか。

映画を見て

おもしろかったです。
なぞの神「どろろ」や映画冒頭からながれる民族音楽てきなサウンドが物語のクライマックスで爆発する何かを暗示しているようで、どんどんひきこまれていくし、日常がどんどんねじれていって爆発するまでの展開や、爆発したときに起こる衝撃もすごくよかった。
ゆっくりと積み重なっていく静かな恐怖を是非映画館で!

試写会では吉田大八監督とのティーチインもあって、鋭い質問や裏なばしなど、貴重な話を聞くことができとても有意義な時間でした。
撮影がOKでせかくなので一枚パシャリと。

原作を読んだことが無いのですが、ちょっとこんど手にとってみようかな。

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関連リンク

映画「羊の木」公式サイト


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