映画「ママと神さまとシルヴィ・バルタン」の試写を見て
映画「ママと神さまとシルヴィ・バルタン」の試写を見てきました。
実話をベースにした自伝的物語とのことですが、「感動の実話」なんて一言で片付けるのがもったいないくらい、エネルギーに満ち溢れた作品でした。
圧巻の母・エステルの「狂気的な愛」
この映画の核は、なんといってもお母さん(エステル)の熱量です。 息子の足の障害を治すためなら、医者の言葉も教育システムも全部無視。独自の民間療法と「あなたは絶対に歩ける」という盲目的な信仰だけで突き進みます。
劇中で何度も繰り返される「あなたのために私が身代わりになる」という誓いの言葉。 それは深い愛であると同時に、逃げ場のない「支配」のようにも聞こえて、正直最初は「これ、現代ならアウトなんじゃ…?」とヒヤヒヤしてしまいました(笑)。
でも、そのお節介で「ありがた迷惑」なはずの狂気が、奇跡的に良い方向へ転がっていく。ここまで我が子への愛の「光と影」を真正面から描いた作品も珍しい気がします。
レイラ・ベクティの怪演が凄すぎる
母親役を演じたレイラ・ベクティが、とにかく圧巻。 なんと30代から80代までを一人で演じ切っているんです!最初は似ている別の俳優さんかと思ったほど。 年齢とともに肉体が衰えていく様も見事ですが、何歳になっても息子を見つめる「眼」の強さが変わらない。あの眼に射抜かれたら、息子は歩くしかない。そう思わせる説得力がありました。
「推し活」は世界を救う!
学校に行けなかった主人公ロランにとっての教科書は、テレビの中のアイドル、シルヴィ・バルタンでした。 バルタンの歌を通じて言葉を覚え、世界を知り、人生を歩み出していく。これ、現代でいう「推し活」の究極の形ですよね。
「好きなものがある」ということが、過干渉な母からの自立を助け、人生の支えになっていく過程は本当に美しかったです。
障害を「可哀想なもの」として描かない潔さ
この映画が素敵だなと思ったのは、障害を惨めで悲劇的なものとして描いていないところ。 母の愛(とちょっとの狂気)、家族の絆、そして大好きな「推し」の力で、ポップに、明るく乗り越えていくんです。
よくあるお涙頂戴系ではなく、一人の人間としての尊厳がしっかり守られている。 人種や宗教、障害といった重くなりがちなテーマも含んでいるのに、全編を通してテンポが良くて、観終わった後はとっても気持ちが良い作品でした。

笑えるシーンもたっぷりあるし、なんとシルヴィ・バルタン本人が登場するというサプライズも! 当時のフランスの音楽やファッションもオシャレで、その時代の空気感を知っている人はもっと楽しめるはず。
「ママの愛は重い。でも、それがないとやっぱり寂しい」 そんな風に、家族の形をちょっと笑いながら、でも温かく考えさせてくれる素敵な一本でした。







