- - AD - -
 映画「川っぺりムコリッタ」予告動画

映画「川っぺりムコリッタ」の試写を見てきました。
作品は、荻上直子監督が2019年に発表した小説を映画化したもの。
かもめ食堂」「めがね」などでお馴染みの荻上監督らしい幸せを感じる食事と、「遺骨」をテーマにした生々しく怖さも感じる不思議な作品でした。

お腹が空きます

荻上監督の作品っておなかすきますよね。
映画「かもめ食堂」のシナモンロールや生姜焼きもおいしそうだったし、映画「めがね」の普通なんだけどとてもおいしそうな朝食など、どれもおなかがグーっとなってしまいそうになります。
「川っぺりムコリッタ」に出てくる“食”もおいしそうで幸せに気持ちになります。
島田(ムロツヨシ)が持ってきたきゅうりとトマトを頬張るシーンや、白米に塩辛をのせてかきこむ場面に、風呂上がりの牛乳などなど。
暑そうな夏の日に山田(松山ケンイチ)と南さん(満島ひかり)の二人でたべているアイスもおいしそうだったな。
どれも素朴で日常なんだけど異常においしそうに見えるからすごいです。
また、イメージだけでもおいしさを伝える場面もありました。
溝口(吉岡秀隆)と少年が妄想で食べるふぐ刺しが、ただのイメージなんだけど想像を搔き立てる言葉に胃袋を刺激されます。

人の温もりと距離感

登場人物達の距離感が絶妙で良かったです。

山田(松山ケンイチ)と島田(ムロツヨシ)のじゃれ合いに憧れます。
静かに生きたいと思っていた山田(松山ケンイチ)にズカズカと踏み込んでいく島田(ムロツヨシ)。
最初は「こんな隣人がいたら嫌だな」と思いなが見ていたのに、物語が進んでいくうちに島田の図々しさを受け入れていて可愛く思えるようになってました。
また、ザバザバとした大家の南さん(満島ひかり)との他人なんだけど親戚のおばちゃんのような距離感も良かったし、溝口(吉岡秀隆)の家で囲むすき焼きのシーンはほっこりしました。
昭和の雰囲気が漂う次代風景に懐かしさを感じながら、コロナ禍で人にも会いづらくなってしまった世の中には無い温もりを感じます。

遺骨と死

山田(松山ケンイチ)の父親、亡くなってもまだ存在を感じる隣人、墓石を売る溝口(吉岡秀隆)、南さん(満島ひかり)の夫。
物語のが進むにつれて「死と生」「遺骨」と向き合う流れに。
父の遺骨を引き取るために訪れた役場で堤下(柄本佑)との無縁仏や喉仏の話、骨壷を受け取った部屋は衝撃的でした。
川辺に住むホームレスが台風の日にいなくなってしまう話や、遺骨を捨てると刑法で罰せられることなど、ゆったりした流れの中に入ってくる「死」の要素が生々しくて少し苦しくなります。

遺骨と笑

展示作品

川っぺりムコリッタ

「死」をテーマにした作品は重くなりがちですが、どこか抜けていて脱力感があり、クスッと笑える場面がたくさん散りばめられているので不思議な感じです。
キャラクターもコミカルだし、荻上監督っぽさを感じる間にも癒やされ助けられます。

素晴らしい俳優陣

松山ケンイチさんがすごく好きで、真面目で少しまのぬけた人物像がピッタリで良かった。
最初は奇妙でサイコなキャラかと構えてしまったムロツヨシさんは、物語が進むにつれて愛せるイイやつになっていくし、ヤバイやつとイイやつの間を絶妙に演じてるのがすごいです。ムロツヨシさんにしかできないんしゃないかと思わせるほど。
満島ひかりさんの明るく元気でめんどみの良さそうな大家さんからの妖艶でエロティックさは見ていて吸い込まれます。
吉岡秀隆さんのくたびれた感じと耳に残る一瞬の笑い声、最高です。
顔がほとんど見えない江口のりこさんや、声だけの薬師丸ひろ子さんもいて、キャストはかなり豪華で実力派揃いでした。

映画を見て

テーマは重いけど、独特の空気感で見ている人に圧迫感なく浸透させていく荻上監督マジてすごい。
「生と死」がテーマにあって少し宗教的な要素が入っていたせいなのか、独特な間と雰囲気と、そこに入ってくる暖かさと笑いに、不思議とカルタシスを感じます。
作品を見て「気分爽快!」とか「癒やされた〜」とは思わないけど、妙な安らぎと浄化があるきがします。
イカがとてもつもなく美味しそうにみえたり、急に生臭く気持ち悪い物にみえたり、最後は不思議で神秘的な存在になったり、あのイカ何だったんだろ笑。
お腹なかすくし、からすみ食べたくなるし、大切な人に会いたくなるし、笑ったし、楽しい作品でした。

関連リンク

川っぺりムコリッタ公式サイト

川っぺりムコリッタ(原作)

- - AD - -